【中国語怪談話】死なせるものか
今回ご紹介する中国語怪談は『死也不讓妳死……』です。
結婚を約束した大学生カップル。遠距離恋愛の行く末は……
本文
『死也不讓你死……』
在北京有一對高中男女同學,他們[1]很要好,學習也很不錯,在學習生活上都互相幫助,共同進步。
後來男孩子上到南京的一所大學,女孩子在北京的一所大學。他們互相聯繫並[2]確立的戀愛關係。他們約好等大學畢業後雙雙回到美麗的家鄉工作結婚生子。但是時間[3]太能改變一個人了,北京的女孩子經受不了誘惑,[4]為了能夠留在北京。她結識了一個比自己大好多的老闆,並決定就這樣留在北京,做北京人。男朋友知道後。一路悲傷到北京約女孩談心。但是女孩很絕情。要和男孩子分手,恩斷義絕。
男孩子一時氣憤衝動。[5]拿起水果刀就割自己的手腕。
女孩子不但沒有阻攔,甚至都沒有叫救護車並且看著男孩流盡了血,在抽搐和絕望中死去。直到死,他都死死的盯著女孩,盼他回去。
[6]不久以後女孩懷孕了,生了一個小男孩。可是孩子老是鬧得厲害。女孩子沒有辦法。決定把孩子送給
自己的媽媽帶著。說來很奇怪,她一做這個決定,孩子就不鬧了。回到家鄉的感覺很好,可惜是在夜裡,[7]車的終點站離家還有一段距離。她就抱著孩子往家走。突然她看到孩子死死的盯著她在咀嚼什麼東西。[8]翻看衣服一看,孩子在啃自己的手,手已經被啃的稀巴爛。女孩嚇壞了。一個趔趄就坐在地上。
孩子上來就咬住她的頸動脈,死死的盯著她。那種熟悉的眼神。
孩子啃斷她的動脈咿呀的說。死也不讓妳死在北京!
<出典>
豆瓣「史上最恐怖的9篇超短篇鬼故事」
https://www.douban.com/group/topic/9370150/
解説
[1]很要好
ここでは「仲の良い」と意訳しています。
「仲が良い」という意味です。主に1対1の関係を形容するときに使います。
どのような関係においても使えます。
<很要好>を使った例文
你和主管很要好,但職業上公私分明很重要喔。
(上司と仲良いみたいだけど、職場では公私混同は避けてね)
她是我最要好的朋友。
(彼女は一番仲がいい子なの)
[2]確立的戀愛關係
ここでは「遠距離恋愛ではあるものの」と意訳しています。
「恋愛」に関しては、いろいろな言い回しがあります。
例文
[談戀愛] 我也有談過戀愛呀!
(私だってお付き合いしたことくらいあるわよ!)
[交往] 我們從上週開始交往。
(僕たち先週から付き合い始めたんだ)
[3]太能改變一個人了
ここでは「時間は人を変える」と意訳しています。
元の文を直訳すると「時間は一人の人間を変えることができすぎる」という感じになります。
<太能>を使った例文
那隻公雞太能叫了。
(あの鶏、声出過ぎだろ)
我不太能吃辣的。
(辛いものはあまり食べられないんです)
[4]為了能夠留在北京
ここでは省略しています。
「〜〜できるように」という意味です。
元の文を直訳すると「北京に留まることができるように」という感じになります。
<為了能夠>を使った例文
為了能夠每個人有得戴,政府發送口罩。
(全ての人に行き渡るように、政府はマスクを配った)
為了能夠在台灣自由自在地旅遊,我開始學中文了。
(自分で台湾のあちこちを見て回れるように中国語を勉強し始めました)
[5]拿起水果刀
ここでは「〜果物ナイフを手に取った」と訳しています。
「起」は直前の動詞が始まったことを強調しています。
「拿起水果刀」と「拿了水果刀」ともに同じ意味として通じますが、聞き取り側に与える印象が以下のように違ってきます。
例文
日本語:「果物ナイフで彼のためにリンゴをむく」
她拿起水果刀為他削蘋果。
(ナイフを使うのは初めて?
それとも嫌々やらされてるのかな?)
她拿了水果刀為他削蘋果。
(キッチンにいる場面かな?
リンゴと果物ナイフが同じ場所に置いてあるイメージ)
[6]不久以後
ここでは「それから少しして」と訳しています。
「すぐというわけでもないけれど、そんなに長くない時間が経過した後」という意味ですが、曖昧な言い回しなので、話し手/聞き手の主観も入りやすい言葉です。
<不久以後>を使った例文
當然不久以後就被查明出來了。
(もちろんそんなに長く騙し通せるもんでもなかったよ)
不久以後他又回到日本了[口尼]。
(あいつ、あの後また日本に戻ったらしいぜ)
[7]車的終點站離家還有一段距離
ここでは「家まではまだ距離がある」と訳しています。
「A離B+距離(or時間)」は「AはBから(距離/時間)離れている」という言い回しです。
「還有一段距離」で「まだちょっと距離がある」、「還有一段時間」で「まだちょっと時間がかかる」という表現になります。
<還有一段>を使った例文
洞穴離我們飯店還有一段距離,你們可以利用接駁車。
(ホテルから洞窟までちょっと距離がありますので、送迎バスを利用するといいですよ。)
離晚餐時間還有一段時間,我們先逛個街吧。
(ディナーまでまだちょっとあるから、ブラブラしよっか。)
[8]翻看衣服一看
ここでは「服をめくってみると」と訳しています。
「翻」は「めくる」動作や「ひっくり返る」という表現です。
<翻>を使った例文
開始上課,翻到第十頁。
(授業を始めます。10ページを開いてください。)
我還是要回去,我女友翻臉比翻書還要快呢。
(俺やっぱ帰るわ。俺の彼女、すぐ不機嫌になるからさ。)
※翻臉=怒る
「顔の表情を翻すのが本をめくるよりも早い」という表現です。
訳文
『死なせるものか……』
北京では死なせるものか……
ある仲の良い北京在住の高校生カップル。恋愛にうつつを抜かすこともなく、互いに協力しあい勉学にも励んでいた。
そのおかげか、彼氏は南京の大学に、彼女は北京の大学に進学することになった。
遠距離恋愛ではあるものの、互いに連絡を取り続け、いずれは故郷に戻って就職し、結婚しようと誓い合っていた。
だが時間は人を変える。彼女はかなり年上の、ある経営者との交際を始めた。都市戸籍を取得するためだ。彼女は都会の快適さにすっかり慣れてしまったのだった。
それを知った彼は、傷心を抱きつつ彼女の元へと向かったが、全く取り合ってもらえず、にべもなく別れを告げられた。
彼氏はカッとなって果物ナイフを手に取った。
そしてそれを自分の手首に押し当てると、一息に掻っ切り、彼女を見つめた。再び自分に寄り添ってくれることを期待しながら。
が、彼女はうろたえもせず、助けを呼ぶでもなく、自らの血溜まりの中で、絶望して死にゆく男を見つめ続けた。
それから少しして、彼女は妊娠し、男の子を産んだ。
ぐずりが激しい赤ん坊だった。
いよいよどうしようもなくなって、実家の母に育ててもらうことにした。
不思議なことに、そう決めた途端に赤ん坊はぐずらなくなった。
久々の帰郷に心も弾む。
だが終点の駅についたのはもう夜。家まではまだ距離があるのだが、赤ん坊を抱いて歩いていくしかなかった。
ふと赤ん坊の方を見やると、口をモグモグさせながらこちらをじっと見ている。何事かと服をめくってみると、赤ん坊は自分自身の指をかじっていた。その手は血だらけでもう滅茶苦茶な状態になっていた。
彼女は心底驚いて、その場にへたり込んだ。
赤ん坊はその体を這い上がり、彼女の首筋に噛み付いた。
睨み付けるその目は、彼女のよく知るあの目つきだった。
赤ん坊はそして頸動脈を噛み切ってしまったのだった……
北京でだけは死なせるものか!