ノンアルコールな台湾人

東京で一人暮らしをしていた元OLの私にとって台北は遊びにくい街だった。
というか、気軽に酒を飲める場所が少なかった。だからなんとなく物足りなく感じたのだった。

中華人の酒を飲むペースは日本人からすると速すぎる。「豪」を競うための道具として酒を飲んでいるというか。
医食同源が基本の台湾ではそもそも酒を飲まない人も多いが、酒宴の酔客を嫌う人も少なくないのだろうと思う。
仲間内で飲むといつも悪酔いして生産的じゃないと言って、いっそ禁酒してしまった男性も知っている。
酒も飲むしタバコも吸う私は「日本人女性ってやっぱり開放的ね」と言われたりもする。

台湾で友人ができ始めた頃に、夜の貓空に連れて行ってもらった。
眺めの良い茶屋でお茶を楽しむ。最初から最後までずっとお茶。お茶とおつまみとおしゃべり。
隣のテーブルでは20代前半と思われる男女のグループがお茶を飲みながらトランプゲームに興じていた。茶屋でトランプゲームというのは定番らしい。
壁には「禁止心臟病」の張り紙がある。
「心臓病」とは、プレーヤーが順番に数を言いながら山のトランプを一枚ずつめくっていって、言った数と場に出た数が一致したらカードを叩くという反応の速さを競うゲーム。
盛り上がるとつい大声になってしまうから、周りの客の迷惑になるので禁止しているのだろう。
「心臓病ってそもそも禁止できるの?」と思ったことをよく覚えている。

台湾の合コンもノンアルコールだ。
同年代の男女が休日の昼間に集まって、まず最初に女子にスクーターの鍵を選ばせる。
スクーターの鍵と男子が紐づいていて、鍵を選ばせることで男女のマッチングが行われるという具合。
その日一日、その組み合わせでスクーターに二人乗りして移動する。
主に10代の子達の遊び方かな。
便宜上、合コンと訳されてはいるけれど、中国語の“聯誼”は「交誼」の意味が強い。

貓空と言えば、ロープウェイが通って随分便利になった。
貓空ロープウェイは、途中けっこうなアップダウンがあって、私なんかはちょっと怖いと感じる区間もあるのだけれど。
下りの終点木柵駅に到着する直前に一山越えた後、台北を見渡す夜景が広がる瞬間が私は一番好きだ。

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中国語:聯誼(ㄌㄧㄢˊㄧˊ)
日本語:合コン

Last Updated on 2021年8月27日 by