鼻水と病院と健康保険証の話

ずいぶん前のことだけれど、春先に風邪を引いた。たいていは二、三日安静に過ごして自然治癒させるのだけれど、このときはなかなか状態が良くならなくて難儀したので病院にかかることにした。
ちなみに台湾には花粉症がない。もちろん台湾にも杉の木はあるんだけど、日本のように大規模植林された過去がないので、花粉症を発症させるほどの花粉が飛散しないのだろう。ご自身が花粉症だという台湾人にはまだお会いしたことがない。

せっかくなので、同じ区内にできたばかりの総合病院に行ってみた。
長い長い待ち時間を過ごして診察してもらうと、どうやら風邪を通り越して、常に鼻腔に鼻水が溜まってしまう状態になっていたらしい。

ところで、台湾の健康保険証はICカードになっていて、通称「健保卡」と呼ばれている。
一人につき一枚発行。身分証番号と顔写真が記載されている。
外国籍の私の場合は、入国後六ヶ月経つと保険に加入でき、カードには居留証番号と顔写真のほか別途「外籍」と記載される。

診察が終わり、処方箋を出してもらうために医師に健保卡を手渡すと、おもむろに「妳是哪裡人?(あんたどこの人?)」と尋ねられた。
日本人だと答えると、彼は何かを思案するように黙ったあと一言「ちくのうしょう」と日本語で宣告した。
「あぁ!蓄膿症!」と応えると、「発音、間違ってないだろう?」と、日本に留学していたのだと嬉しそうに話してくれた。

台湾の医師は留学経験者が多いように思う。
国外で学び海外でも学び、台湾に戻って医療に従事する。優秀じゃないわけがない。
余談だが私は「お産なんて言葉が通じようが通じまいがやることは同じ。優秀な医師がいて設備が整った病院で産む」と決め、二人の子供を台湾で出産した。
台湾のお産は健康保険の適用範囲なので、費用は日本の1/20ほどで済んだ。

台湾の健康保険制度は1995年に始まった比較的新しい制度。
扶養の状況に関わらず、一人一枚発行される。
ICには医療関連の全ての記録が記載されるので、病院毎の診察カードは別途発行されない。
コロナワクチン接種の際もこれを使用。個人の医療情報を一括管理できる優れた制度だと思う。
使用する側としても、財布にこれ一枚だけ入れておけばいいのでとても便利だ。

——-
中国語:鼻竇炎(ㄅㄧˊㄉㄡˋㄧㄢˊ)
日本語:副鼻腔炎(蓄膿症)