台湾の葬式と親戚付き合い

台湾で入籍してすぐ、舅が他界した。
うちら夫婦は結婚式を挙げなかったので、台湾人家族の一員になって初の“親戚総動員”となった。
私は千葉県木更津の「〇〇ニュータウン」と名のつく新興住宅地の、典型的な核家族家庭で育ったので、親戚付き合いには疎い。祖父母の記憶はほぼなく、岩手に住む母方の伯母達と少し往来がある程度。父方に至ってはほとんど面識がなかった。
母が面倒な親戚付き合いを嫌ったのだろうと思う。自然と私もこの距離感が当たり前になっていた。
台湾の葬式はすぐには行われない。
同居家族全員の生年月日を占って善き日を選ぶ。
舅の葬式は一ヶ月以上先の日取りとなった。
通夜式はしなかったように記憶している。
葬式までの期間、親戚が入れ替わり立ち替わりお悔やみを述べに来訪された。
父母の兄・姉を迎え入れる際は、家の門の前に出向いて「わざわざご足労いただきありがとうございます」とひざまづいて出迎えるのが正式な礼儀だと教わったけれど、実際には、出迎えてひざまづく準備をして、その前に先方に「そこまでしなくていいよ」と声をかけてもらって、最敬礼を免除してもらった。
台湾の親戚付き合いで一番の難関はその呼び名だ。
日本なら「おじさん」「おばさん」で済むが、中華圏では父方か母方か、両親より年上か年下かで呼び名が変わる。
ざっと羅列する。
父の兄:伯父、伯伯
父の弟:叔父、叔叔
父の姉:姑媽
父の妹:姑姑
伯父の妻:伯母
叔父の妻:叔母、嬸嬸
姑の夫:姑父、姑丈
母の兄弟:舅父、舅舅
母の姉妹:姨媽、阿姨、姨母
舅の妻:舅母、舅媽
姨の夫:姨父、姨丈
「1番目の兄」とか「2番目の弟」とかは、呼び名の前に数字を加える。
本省人の場合はこれが台湾語読みになるからさらにややこしい。
葬式がすぐに行われないということは、荼毘に付す日までご遺体が保留されるということだ。
線香の香りは、私なんかは懐かしい気持ちになるけれど、実は死臭を隠すという目的もあるんだとか。
もちろん舅の葬式でも線香を焚きまくった。
台湾の葬式は子等(と配偶者)が儀式を行う。
しきたりに疎い外国人新妻の私は妊娠初期だったこともあって免除された。
(全行程が台湾語で進行されたので、免除されなくても、進行を邪魔しまくって「あっち行ってろ」となった可能性も)
姑のそばで夫と義弟が儀式を行う様子を見守った。
夫婦別姓の台湾は、配偶者よりも血のつながりの方を重視するのだなぁと思ったのだった。
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中国語:喪禮(ㄙㄤˋㄌㄧˇ)
日本語:葬儀