【中国語怪談話】電話口の向こう

そのカフェの二階ではかつて死傷者が出るほどの不幸な事故があった。
今回のお話は、そこでバイトしていた頃の“あたし”の体験談……
本文
『事件一:借電話』
[1]打烊班一共3人,一樓廚房1人、一樓吧台1人、二樓1人,晚上10點半開始收店,
收完後就可以上二樓辦公室等11點[2]打卡,那一天的晚上客人並不多,所以我們三人 [3]很早就到辦公室等待,時間一到就要把所有機器設備都關閉,才能打卡下班。
但那天不知為何 [4]廣播機器一直關不掉,眼看已經超過11點,若再不走保全公司可能就會打來了。
「小八,妳打給店長,問他怎麼辦」
小黛看起來很焦急,因為她超怕二樓,她不想待太久。
電話響沒幾聲後,店長接了。
「喂?」
『喂,店長,[5]我跟你說……。』「喂??」
店長似乎聽不到我的聲音。
『喂!有沒有聽到?』我摀住另一邊耳朵,提高分貝。
「喂???我聽不到?喂。」
『哦靠北,是[6]鬼打牆 哦。』
我邊抱怨邊掛了電話,說也奇怪,掛上電話當下機器順利關閉了,小黛耶的一聲打了卡,我們迅速逃離現場。我坐上了公車慢慢晃回家,就在下車時店長打來了。
「喂小八」
『店長?怎麼了?』
「妳剛有打給我嗎?」
『有啊,你一直喂,好像訊號很不好吧。』
「我跟妳說……。」
店長深深呼吸一大口接著說,「我剛看手機明明顯示妳的名字,
但跟我講話的卻是男生,
我沒聽到妳的聲音,
但那個男生說,[7]喂……你知道嗎……
呵呵……你明天……死定了……我很害怕他知道我聽到他說的話,
所以一直[8]裝作聽不到聲音,
一直故意喂,喂,[8]假裝收訊不好……」店長語畢,我們在電話兩頭慌張尖叫。
還好隔天我們安然無恙,也許只是被二樓的住戶開了一個小玩笑吧……
<出典>
我在咖啡店打工的恐怖事件(by 小八(IG:8nian8)):
https://www.dcard.tw/f/marvel/p/236508477
解説
[1]打烊班一共3人
私は「その日の遅番は三人で」と訳しました。
「打烊」とは営業時間が終了する/したという意味で、日本語の「閉店」にあたりますが、中国語で「關店」というと、営業時間終了の意味のほかに「お店をたたむ」「倒産した」という意味も持つので、それらを忌避しての言い換えと言えそうです。
日本人には馴染みのない「烊」の字ですが、「金属を溶かす」という意味があります。
そこから転じて、
(炉/釜戸の)火を消した
=加工できない/料理できない
=今日の仕事はもうおしまい
というのが「打烊」の由来だとか(諸説あり)。
[2]打卡
私は「タイムカードを押して」と訳しました。
「卡」とはカード(またはカード状のもの)を指します。
「聖誕卡」でクリスマスカード、「信用卡」でクレジットカードを意味します。
「打卡」とは「カードを押す/パンチする」ということで、「タイムカードに打刻する」という定型文です。
SNSで訪れた場所を記録する動作も「打卡」といいます。「この場所」にいる「この時刻」を記録するという動作がタイムカードの使い方と似ているからかな、と思います。
[3]很早就到辦公室等待
私は「早々に事務室に引っ込んで」と訳しました。
「很早」は「早くに」という意味です。
「早」とは日と甲(人の頭)の会意文字ということですが、中国語の「早」はその意の通り、「早朝」「夜明け」を連想させます。
中国語には「はやい/はやく」を表す言葉に「早」と「快」がありますが、口頭では「快」を使用することがほとんどで、日本語の「早」と「速」の意味を兼ねています。
<早>と<快>の比較
早點去=早めに行きなさい
快點去=早く行きなさい
早點吃=(日常会話では使いません。「早點=(朝食)」を食べると伝わる可能性も)
快點吃=早く食べなさい
早點走=(日常会話では使いません。
「走」には「この世を去る」という意味もあるので、あまり縁起の良い言い回しではありません)
快點走=早く歩いて/もう行こう/さっさと帰れ
早點睡=早めに寝なさい
快點睡=早く寝なさい
早點說=(そんなこと知らなかった!)早く言ってよ!
快點說=(もごもごしないで)早く言いなさい!
[4]廣播機器一直關不掉
私は「店内BGMのスイッチだけがオフにならなくて」と訳しました。
「廣播」はラジオ放送を指すことが多いのですが、「店内で流される音」という広域の解釈の方がしっくりくると思いましたので「BGM」としてみました。
「關不掉」とは「閉められない/オフにできない」という意味です。
「掉」は「落とす/失くす」という意味ですが、動詞の後につけることでその動作が完了したことを表現できます。
「關不掉」は「無法關(機)」と言い換えることもできますが、「掉」の語気によって「さっさと切り上げたい気持ち」が強調されています。
<〜掉>を使った例文
這顆芒果已經壞掉了。
(このマンゴーもうダメだね。)
欸,我的褲子口袋破掉了。
(え、ズボンのポケット破れちゃってるじゃん。)
[5]我跟你說
私は「(店長、)あのですね……」と意訳しました。
直訳すると「私とあなたは話します」なのですが、通常は話を切り出す時の最初の一言として使われます。「ちょっと聞いて」や「ねぇねぇ」に相当します。
初対面で話しかける際には違う言葉が使われます。
「請問(一下)」が一般的で、「(ちょっと)お尋ねします」という意味です。日本語なら「(ちょっと)すみません」が近いですね。(ただし、謝罪の意味は含みません)
窓口スタッフや店員さんなどへの問いかけに使います。
例:請問成人票一張多少錢?(すみません、大人一枚だといくらですか?)
「請教你(一下)」という言い方もあります。「(ちょっと)教えて欲しいんですが」という意味です。
通りがかった人に道を尋ねたり、勝手がわからない場所で知ってそうな人に話しかける時などに使います。
「知ってたら教えてくれませんか」というようなニュアンスです。
例:請教你一下,直走會通到龍山寺嗎?(すみません、これをまっすぐ行くと龍山寺に着きますか?)
[6]鬼打牆
私は「全然ダメじゃん!」と意訳しました。
「鬼打牆」は直訳すると「霊が壁を作る」という意味です。
(霊が作った)見えない壁に沿って歩かされて、結局元の場所に戻ってきてしまった…という状態を指します。
キツネにばかされた状態とも言えるのですが、「鬼打牆」の言葉の意味としては「堂々巡り」の方がしっくりきます。
堂々巡りの由来は「お坊さんが祈願のために堂の周りをぐるぐる周ること」だそうです。
方や「鬼(霊)」、方や「お坊さん」…言葉の成り立ちは非常に興味深いですね。
[7]喂……你知道嗎……
私は「おい……知ってるか……」と訳しました。
この「喂」を「もしもし」にしなかったのは、本来の呼びかけの方法で言っていると思われるからです。
電話口では一般的には「ㄨㄟˊ(二聲)」と語尾を上げて発音しますが、例文のような場合は「ㄨㄟˋ(四聲)」と語尾を下げた方がそれっぽいです。
呼びかけの例として、家族間や友人同士で「ㄨㄟˋ(四聲)」と軽く発音すると、「ちょっと〜」というこちらに注意を向けさせたい呼びかけになります。
対して、強く鋭く「ㄨㄟˋ(四聲)」と発音すると、例えば子供がながらスマホで食事している時など、「こら!」という感じで伝わります。
[8]裝作聽不到聲音/假裝收訊不好
私はそれぞれ「聞こえてないフリしなきゃ」「ずっともしもしってやってた」と訳しました。
「裝作聽不到聲音」は「音が聞こえてないふりをした」、「假裝收訊不好」は「電波状況が悪いふりをした」という意味です。
「裝作」「假裝」はどちらも「〜な振りをする」という意味です。
上の例で言うと、「假裝聽不到聲音」「裝作收訊不好」と入れ替えて使っても意味に違いは出ません。
<假裝>を使った例文
我今年要假裝喝咖啡存那筆錢!
(今年はコーヒーを「飲んだつもり貯金」をやるぞ!)
假裝問題不存在,這狀況也不會好轉。
(問題に気づかないふりをしてても、この状況は好転しないよ。)
訳文
『エピソード1:電話口の向こう』
その日の遅番は三人で、一階キッチンに一人、カウンターに一人、二階客席に一人っていう分担で締め作業をしてたのね。
夜10時半に始めて、11時になったら店内設備の電源をオフにしてタイムカードを押して業務終了。自分の作業が終わったら二階の事務室に行って他の人を待つんだけど、その日はお客さんも少なくて、三人とも早々に事務室に引っ込んで時間になるのを待ってたの。
この日はなぜか店内BGMのスイッチだけがオフにならなくて、11時はとっくに過ぎてるし、警備システムが作動する前に店を出なくちゃってみんなちょっと焦り始めたときに、マユが落ち着かなげに「ハチコ、店長に電話してどうしたらいいか聞いてよ」と切り出した。怖がりの彼女は、一刻も早くここを離れたいんだと思う。
電話をしてみると、店長はすぐ出てくれた。
『もしもし?』
「もしもし、店長、あのですね……」
『……もしもし?』
こっちの声が聞こえてないみたい。
「もしもし!聞こえますか?」あたしは反対の耳を押さえながら声のトーンを上げた。
『……もしもし??……聞こえないな……もしも〜し』
「ああ!もう!全然ダメじゃん!」
あたしは悪態をつきながら電話を切った。そして、ダメ元でBGMのスイッチを操作してみたら、今度はなぜかすんなりオフになった。
マユが「やった!」と勇んで全員分のタイムカードを押す。うちらは速攻でお店を出た。
それからあたしはいつものバスに揺られて帰り、最寄りのバス停で降りたところで店長から着信。
『もしもし、ハチコか?』
「店長、どうしたんですか?」
『さっき電話してきただろ?』
「しましたよ〜。店長、ずっともしもし言ってるから、電波悪いのかなって」
『いや、実はさ……』
店長は大きく息をつくと、こう切り出した。
『さっきさ、ハチコから着信って表示されたから出たんだけど、
男がなんかしゃべってんだよ。
あれ?ハチコじゃねぇのか?って思ったんだけど、
その声がさ、こう言ってたんだよ。
おい……知ってるか……
ひひひ……おまえ……明日死ぬぞ……
で、咄嗟に聞こえてないフリしなきゃって思って、
だからずっともしもしってやってたんだよ……』
あたしはゾッとして思わず小さく悲鳴をあげた。電話の向こうからも店長の引き攣った唸り声が聞こえてきた。
次の日、結局何も起きなかったんだけどね。二階の“住人”にうちら全員からかわれたんだなぁ、きっと……
語り手「小八」はハチコ、その親友「小黛」はマユと訳してみました^^
メルマガで最新の更新情報を配信しています。
日本語翻訳文も先行配信中!
ご登録はこちらから↓
メルマガ詳細
你想要披露你的體驗嗎?請透過 [中文]關於我 與我聯絡!
我將把你的體驗談翻成日文在此介紹!^^
Last Updated on 2024年5月30日 by aki.tw