台湾事情とコミュニケーションの話

親日の台湾
観光で、または出張で台湾を訪れたことがある方も多いことでしょう。台湾が親日と言われる理由の1つとして、「日本語への理解度が高い」という点があげられます。業務のすべてを日本語で対応できることを売りにしている台湾ローカル企業も多くあります。台湾の物価は日本のおよそ三分の一。外注先を台湾に変更すれば、理論上はかなりのコスト削減が可能となります。

台湾の雇用事情
台湾企業のほとんどは、正規雇用前に3ヶ月間の試用期間を設けています。通常はそのまま正規雇用へ移行しますが、専門性が違う、などの理由で社を去らなければならないケースも稀にあり、「即戦力であるか否か」が問われる重要な3ヶ月であるとも言えます。
企業が即戦力を重視するということは、中途採用に積極的であるということであり、すなわち転職も頻繁に行われるということでもあります。
台湾企業は「(会社としての)寿命が平均約13年」と言われていますが、ワンマン経営、親族経営の中小企業が多く、その内部は個人の能力に依る部分が大きいということがこの短命に関係しているといえそうです。

コミュニケーション上のズレ
親日と言われる台湾も、ビジネスではまた別の話。納品が完了しても報酬の送金がなく泣き寝入りせざるを得なかったという話は、台湾側/日本側双方から耳にする話です。
支払いや責任の所在など、日本人同士なら暗黙の了解として通用するようなことを、日本語を話しているというだけで、育った国も環境も違う相手に「自分たちの常識が通じるはず」と思ってしまったところが落とし穴であると言えるかもしれません。

新しいコミュニケーションの形
英語の「I love you」を中国語で言うと「我愛你」。日本語に訳すと「愛しています」です。あれ?「I」も「You」も「我」も「你」もどこかへいっちゃいましたよね。
日本語には主語を省略して話す習慣があります。一から十まで説明することを「粋ではない」とする傾向も強いですよね。主語を省くことで語気を和らげる効果もあるのでしょう。「和」を大事にする日本人ならではの言い回しです。でも、この主語を省略する日本語がよりコミュニケーション上の「ズレ」を発生させてしまう原因でもあります。
そして「和」を重んじれば「個」が埋没していきます。「私」の対面にいるのは「あなた」です。「みんな」でもなければ、「会社」でもありません。
「みんなそう思っている(はず)」本当にそうでしょうか?「私はこう考えますが、あなたはどう思いますか?」と聞いてみたら、もしかすると思っていたのと違う回答が戻ってくるかもしれませんよ!


このコラムは2014年4月に発行された「月刊!人事・労務の玉手箱News」(社会保険労務士法人スイング 制作・著作・発行)の「F.A.Nの日本を元気に明るくするコラム」に寄稿させていただきました。
社会保険労務士法人スイングウェブサイト:http://www.nari-sr.net
F.A.Nウェブサイト:http://freeagent-network.co.jp

Last Updated on 2025年1月16日 by aki.tw