【中国語怪談話】もう邪魔者はいない

今回ご紹介する中国語怪談は『沒人和我搶了』です。
最終バスを待つ男の身に降りかかった恐怖とは……
本文
『沒人和我搶了』
『沒人和我搶了』 有一個男生晚上要坐公車回家,可是因為他到站牌等的時候太晚了,[1]他也不確定到底還有沒有車……又不想走路。因為他家很遠很偏僻,所以只好等著有沒有末班車……[2]等啊等啊……他正覺得應該沒有車的時候,忽然看見遠處有一輛公車出現了……他很興奮地去攔車。一上車他發現這末班很怪,[3]照理說最後一班車人應該不多,因為路線偏遠,但是這台車卻坐滿了……只有一個空位,而且車上靜靜靜地沒有半個人說話……
他覺得有點詭異,可是仍然走向那個唯一的空位坐下來,那空位的旁邊有個女的坐在那裡,等他一坐下,那個女的就悄聲對他說:“你不應該[4]坐這班車的”,他覺得很稀奇,那個女人繼續說:“這班車,不是給活人坐的……”,“你一上車,他們(比一比車上的人)就會抓你去當替死鬼的”。他很害怕,[5]可是又不知道該怎麼辦才好,結果那個女的對他說:“沒關係,我可以幫你逃出去”。於是她就拖著他拉開窗戶跳了下去,當他們跳的時候,他還聽見“車”裡的**喊大叫著“[6]竟然讓他跑了”的聲音……
等他站穩時候,他發現他們站在一個荒涼的山坡,他鬆了一口氣,連忙對那個女的道謝。那個女的卻露出了稀奇的微笑:“現在,沒有人跟我搶了……”
<出典>
豆瓣「史上最恐怖的9篇超短篇鬼故事」
https://www.douban.com/group/topic/9370150/
解説
[1]他也不確定到底有沒有車
ここでは「最終バスはもう行ってしまったかもわからない」と訳しています。
「不確定」は「確かではない」という言い回しです。
「主語+也(or都)」とすると、「実行する方向で動いているけれど、私(当事者)も不確かな情報しか知らないよ」というニュアンスを持たせられます。
「不確定」を「不知道」に入れ替えても曖昧なニュアンスが伝えられます。
<不確定/不知道>を使った例文
我也不確定那家餐廳今天有沒有開。
(あのレストラン、今日はやってないかもだけどね。)
我也不知道那家餐廳幾點才會開。
(あのレストラン、何時からやってるかはわかんないけどね。)
[2]等啊等啊
ここでは「待てど暮らせど」と訳しています。
「動詞+啊,動詞+啊」という表現は、その動作を繰り返し行ったことを表します。
例文
我一回家就馬上睡著了,睡啊睡啊,睡到隔天中午才爬起來。
(家に帰ったらバタンキューで、次の日の昼までずーっと寝てたよ。)
我和他一起去吃到飽餐廳,他吃啊吃啊,吃了兩小時還說還沒飽耶!
(食べ放題に行ったんだけど、こいつ、2時間食い続けたくせに
「まだ入る」とか言うんだぜ!)
[3]照理說
ここでは「通常〜」と訳しています。
「理屈に照らし合わせると」という言い回しです。「照理來說」「照理來講」と言ったりもします。
思ってたんと違うときに多用されます。
<照理說>を使った例文
你在美國出生,照理說會英語才對啊。
(アメリカ生まれっていうから、英語ができるって思うじゃん。)
照理說,天天吃低熱量食物應該會瘦下來。
(道理としては、低カロリーフードを食べ続ければ痩せるはずだけど。)
[4]坐這班車
ここでは「このバス」と訳しています。
「這台車」「這輛車」も「このバス」という意味になります。
路線や発車時間について言う場合は「班」、
特定のバスの車両について語る場合は「台(輛)」と使い分けます。
例文
「このバスは台北駅には行きません。」
○:這班車沒有到台北車站。
×:這台車沒有到台北車站。
「このバスには冷房がありません。」
×:這班車沒有冷氣。
○:這台車沒有冷氣。
[5]可是又不知道該怎麼辦才好
ここでは「〜が為す術がない」と訳しています。
「又」を入れることで相反する状況を強調しています。
<可是(我)又~>を使った例文
可是我又不知道該怎麼問。
(とはいえ、どう聞けばいいのかわからない。)
可是我又不太會講話。
(とはいえ、僕はとても話し下手だ。)
[6]竟然讓他跑了
ここでは「おい!逃げられてしまったぞ!」と訳しています。
「竟然」は「なんと」という驚きの表現です。過去形の文章で使用されます。
「讓」は使役動詞です。「〜させる」という表現です。
直訳すると「なんと、彼を逃げさせてしまった」という感じになりますが、よりなじみやすいように意訳しています。
<竟然>を使った例文
竟然全都吃掉了。
(なんと全て平らげてしまった。)
到了大賣場,他竟然只買了一個口香糖。
(大型スーパーまで来たのに、彼はガムを一つ買っただけだった。)
<讓>を使った例文
抱歉讓你久等了。
(お待たせしてすみません。)
欸!你讓我笑到哭出來耶!
(ちょっと!面白すぎて泣けてきたんだけど!)
訳文
『もう邪魔者はいない』
ある夜のこと。男がバスを待っていた。
遅い時間だったので、最終バスはもう行ってしまったかもわからないのだが、男の家は辺鄙な場所にあり、歩いて帰れる距離でもないので、来るかどうかわからないバスを待つよりなかった。
だが待てど暮らせどバスが来る気配はない。
諦めかけたその時、遠くにバスのあかりが見えた。男は勇んで大きく手を振った。
その違和感の正体はすぐに分かった。
通常、下り方面の最終バスはそれほど混まないものだが、そのバスの座席はほぼ埋まっていた。しかも乗客は皆一様に押し黙っている。
男は不審に思いながらも一つだけ空いている座席に腰を下ろした。
すると、隣の席の女が小声で話しかけてきた。
「あなた、なぜこのバスに乗ったの?」
男が首を傾げると女はなおもこう続けた。
「これは死人のバスよ」
「ほら、あなたを捉えて体を乗っ取ろうと手ぐすねひいているわ」
と少し首を動かして辺りを見回した。
男はにわかに恐怖心が湧いてきたが為す術がない。
「大丈夫。私が逃してあげる」
女はこう言うといきなり窓を開け、男を力任せに引っ張ってそのままバスから飛び降りた。
「おい!逃げられてしまったぞ!」
車内の**達が騒ぎ出したが、その声も徐々に遠ざかっていった……
男がやっとのことで立ち上がると、そこは寂れた山道だった。
安堵のため息をついて女に感謝を述べる。
すると女は満足げに微笑みながらこう言った。
「さぁ、これで邪魔者はいなくなったわ……」