「通訳」というお仕事の話

先週、台湾から出張で来た友人(日本人)と数ヶ月振りにおしゃべりしました。
おしゃべり中に出た、二人の共通の認識は、
「通訳してるときは、話している内容自体が全く頭の中に残らない」
通訳しているときの私の頭の中は、単語検索のためにフル回転している状態になっています。
他人の言葉を最適な中国語or日本語に当てはめるために脳内辞書をフル稼働させているので、記憶機能を一時的に無効にしておかないと辞書変換が間に合わないのでしょう。
事前に事業内容や商品情報を予習しておくことで、“脳内辞書”のジャンルをある程度特定することができます。
通訳している最中は必ずメモを取ります。
業界特有の専門用語や数値を書き留めておいて、聞き返す手間を省くためです。
(メモ無しでスラスラと通訳されている方をメディア等で見かけますが、羨望してやみません!)
通訳が終わると、頭の中は断片的な情報だけがモヤモヤと漂っている状態です。メモをとっているので、会議の内容を書き留めていると思われるのか、「あとで議事録を出しておいてね」と言われたことが(一度だけ)ありましたが、「できるかボケェ!わしゃ通訳じゃ!内容を精査するのはお前の仕事じゃ!」という主旨を適切な言い回しに変えてお伝えしました。
一回限りの通訳の場合はそんな感じです。
1日で二つ以上の会議があるときや、展示会などで個々に質疑応答するときなど、相手方への回答内容をすでに知り得ている場合もあります。
通訳という立場上、勝手に答えることはせず、質問が重複していたとしても、発言の通りにお伝えします。
「外国語で会話するときは、思考もその言語で行っている」というのは本当です。
私の場合だと、中国語で会話するときは中国語で思考しています。
通訳の仕事は「日本語に置き換える(日本語を置き換える)」という一手間が加わるので、何倍も消耗します。
全く概念のない単語や文言(“脳内辞書”にない言葉)が出てきたときには、聞き返して、まず私が理解してから翻訳して伝える、という作業も行います。
通訳というのは「他人の思考を言語化する仕事」であるとも言えます。
現場ごとに新しい知識を吸収し、“脳内辞書”を更新する必要があります。
負担も確かに大きいのですが、学習欲のある私にとっては、非常に刺激的で楽しい仕事でもあります。
Last Updated on 2025年2月15日 by aki.tw