SARSのとき04〜自主隔離生活をする
このころ、日本からの出張者も戦々恐々だったようだ。
台湾へ出張でいらした日本語学校のスタッフの方から体験談を伺った。
彼の出張ルートは、まず中国、それから台湾へ飛び、再び中国を経由して日本に帰国するというものだった。
中国で原因不明の感染症が流行し始めているという情報を事前に得ていた彼は、日本出国時にマスクを多めに持参することにした。
中国のホテルにチェックイン。ホテルスタッフは誰もマスクをしていない。現地情報を確かめようとフロントで感染症について質問したところ、「そんな病気はありません」と一蹴されてしまった。
すると一人の西洋人が声をかけてきた。フロントでのやりとりを聞いていたらしく、寝耳に水だったようだ。日本での報道内容を説明し、持参したマスクを分けてあげたという。
中国での仕事を終え台湾へ。台湾では空港に到着した時点でSARS対策が始まっている。マスクもちゃんと着用している。
みんなが危機感を感じていて、情報開示と報道が正常であることに、こんな状況下ではあるものの、逆に安心したそうだ。
1週間程度の滞在ののち再び中国へ。最初と同じホテルにチェックインすると、果たしてホテル内の全スタッフがマスクを着用していた。
WHO内での台湾は中国の属国としての扱いだったので、通達事項は中国でストップしてしまい、情報開示が全くされていなかったのだが、中国国内に対してもそれは同じで、市井の人達は何の情報も持っていなかったのだ。
それがたった1週間で人づて口づてで情報が回り、競ってマスクをしだしたという次第のようだ。
くだんの彼は日本に帰国後、自宅の自室にこもって2週間を過ごしたそう。
万が一のことを考えて、家族や同僚に感染を広げることがないよう、前もって計画して自主的に隔離生活を実行した。
幸いなことに感染していなかったけれども、当時、感染地域へ出張した日本人の何割が自主隔離を実施しただろう。本当に真摯な人だ。
SARSはいまだに解明されていない点が多い。
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日本語:マスク
中国語:口罩(ㄎㄡˇㄓㄠˋ)